（※【水滞証と腎(1)】のつづきです）
①「変形性膝関節症」による膝関節痛（10年以上前から）
② あさ起床時の肩と腰の痛み（2-3年前から）
③ あさ起床時から右手がじゃんけんの「グー」の形に
固まったまま、痛くて開くことができない
――以上が、Ｃさんの初診時の主訴でした。
ちなみに補足しておくと、膝に関しては10年ほど前に
医療機関で「変形性膝関節症」との診断を受けており、
その後、当院に来られるまでの間、痛くなったり水が溜まったりすると、
整形外科で痛み止めや「水抜きの注射」をしてもらっていたそうです。
現在の症状やこれまでの経過、既往歴などをひと通りお聞きした後、
次におこなうのが「自覚症状の聞き取り」です。
当院では、およそ80もの項目が記載された「予診チェックシート」に
一つひとつ患者さんご自身でチェックを入れていっていただき、
その結果から判断して「証」を仮定するやり方を採っています。
このときの証は最終決定ではなく、あくまでも「仮の証」です。
望診や切診を併せ用いて、はじめて証が決定されるのです。
Ｃさんのチェックシートには、以下の項目にチェックが入っていました。
A-① 動くと汗をかきやすい
A-② よく立ちくらみがする
A-③ 手脚の重だるさを感じることが多い
A-④ 掌(てのひら)に汗をかきやすい
B-① 自分は冷え性だと思う
B-② 耳が聞こえづらいことがある
B-③ 腰や脚、膝に疲れや脱力を感じる
B-④ 排尿（おしっこ）の異常を感じる
B-⑤ 寒い日や寒い所では元気が出ない
C-① よく物忘れをする
C-② 髪に艶(つや)が無く、抜けやすい
C-③ 目が疲れやすく、乾燥しやすい
C-④ 筋肉が痙攣したり、つることがよくある
D-① よく のどが渇く
D-② 体温は高くないのに体が熱っぽく感じることがある
D-③ 疲労時や夜間、掌や足の裏が熱く感じることがある
E-① 肩や頸の後ろが凝っている、または張っている
F-① 口の中が苦く感じることがある
F-② 痒みを感じることが多い
F-③ おしっこの色が濃い
G-① 肌が黒ずんでいて、シミ・そばかすが多い
H-① おしっこの量が多い
H-② コーヒー、緑茶、ビール、清涼飲料水などをよく飲む
さて、これらのチェック結果から何を判断するかというと、
一つには「気血水」いずれのアンバランスが顕著であるかということ、
いま一つは「五蔵」のどこに――すなわち、
体のどんな生理機能に異常があるかということです。
気・血・水は、いずれも過不足なく、滞ることなく、
体じゅうを潤滑に循っていなければなりません。
また、その気血水のアンバランスは、どの蔵の異常に由来するのか
――それをこのチェックシートをもとに仮定するわけです。
そして次に、実際に患者さんの体をよく望診（＝視診）し、切診（＝触診）
することで得られた所見を勘案して、最終的な証を決定します。
このように、患者さん自身の自覚症状＝自覚的所見と、
施術者による診察＝客観的所見を同じ重要度をもって考慮すること
――それが東洋医学における診察の特色です。
患者さんが体の不調を必死に訴えていても、
「検査結果の数値に異常はありません。たぶん気のせいでしょう」
などという診断(?)は、東洋医学では基本的にありえないのです。
（※【水滞証と腎(3)】へつづきます）
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