(※【水滞証と腎(6)】のつづきです)
施術前の(予診段階での)問診・望診・切診は済みましたので、
あとは施術をしながら、さらに望診・切診を注意深くおこない、
また、施術中の会話の中で大事なことを聞き出していくという形で、
さらなる入念な問診を進めていきます。
この「術中問診」から得られる情報は、
施術内容を左右するほどに重要なものです。
Cさんの場合、初診時の施術中のやり取りの中で、
主訴以外に次のような事実が判明しました。
(※主訴に準ずるものとして、通し番号を付すことにします)
④ 緑茶・果物・甘いものを常日頃たくさん摂取していること
⑤ 昼夜を問わず頻尿であること
⑥ 多量かつ頻繁に尿失禁があること
⑦ 日頃よく目がショボショボして涙が出てくること
⑧ 5年前に加齢黄斑変性症の手術を受けていること
⑨ よく休んでいるにもかかわらず、よく疲れること(易疲労)
⑩ 疲れると症状が増悪すると感じていること
本当はもっとありますが、重要だと思われるものだけでも
以上のような数々の事実が会話の中から判明してきました。
これらについても簡単に解説を加えておく必要がありそうです。
④は、水滞を形成する主要因の一つです。
これらの食品を「多量に」摂取することは、胃の働きを阻害し、
胃を冷やし、体熱を産生しづらい体にしてしまう元凶となります。
お心当たりの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
⑤頻尿は、言うまでもなく水滞証の主症状の一つです。
体は余剰水分を排泄しようと一所懸命がんばっているのですが、
洪水のように後からどんどん水が溜まり、
いくら排出しても追いつかないのです。
その結果、⑥尿失禁という事態にまで至ってしまいます。
これはもはや、尿意をコントロールできないという
中枢神経系の問題をはらんでいるということであり、事態は深刻です。
⑦の「涙が出てくる」というのも、東洋医学的には⑥と同じ理由です。
出るべきではない水が「溢れ(あふ)れ出てしまう」
という点において、両者は同じだからです。
⑧加齢黄斑変性症について「加齢黄斑ドットコム」のホームページには、
本症の原因として次のように記載されています。
「詳しい原因はわかっていませんが、滲出型では網膜のすぐ外側にある
脈絡膜(みゃくらくまく。網膜に栄養を送っている)から良くない血管
(脈絡膜新生血管と言います)が伸びることが、この病気の始まりです。
脈絡膜新生血管はもろいため、破れて出血したり、
血液中の成分が漏れ出たりして、その水分が組織内に溜まります。
その結果、網膜を押し上げるため黄斑が腫れて、見え方に異常が現れます」
これをお読みになっておわかりのように、本症もまた
水滞証の人がなりやすい疾患の一つだということができます。
ここで、さらに一つ言えることは、
⑦⑧と「目」の症状が出ていることです。
後ほど詳述しますが、目は「肝」のつかさどる器官。
(※もちろん、肝臓のことではありません!)
つまり、Cさんには「腎」以外に
「肝」の機能障害の疑いもあるということです。
このように「腎」と「肝」が併せ病むことは、珍しいことではありません。
「肝腎要(かんじんかなめ)」とは本当によく言ったものだと思います。
そういえば、あの
「背中にある水風船のようなぶよっとした感触の瘤(こぶ)」は、
「肝兪(かんゆ)」というツボにあたる場所にありました。
いずれにせよ「腎」に加えて「肝」の機能改善も
治療の眼目に加えなければならなくなりそうです。
(※【水滞証と腎(8)】へつづきます)
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