(※【水滞証と腎】の最終回です)
できることに制約があるとはいえ、
施術者としてやれるだけのことをやるしかありません。
その後もおよそ月一回のペースで来院されるCさんに対し、
私もまた、腎・脾・肝に働きかける治療をおこないました。
その間、膝痛・手のこわばり・眼のチカチカの
三大症状を繰り返し訴えていたCさんでしたが、
初診からおよそ半年後の第8診では、
「以前のように膝がひどく腫れて痛むということが無くなった。
あれはいったい何だったのだろうと思う」
と言われ、膝痛に関してはほぼ寛解をみるに至りました。
3週間後の第9診においても「膝痛はもう無い」とのことでしたので、
膝への3D刺激療法ももうやめることにしました。
10年以上前から苦しめられてきた慢性の膝関節痛が、
6か月8回の施術で寛解に漕ぎつけたわけですから、
治療はうまくいったと言ってよいでしょう。
ただし、膝関節の変形・変性までもが直ったわけではありませんから、
【ひざ関節痛の話(4)】のブログでご紹介したような太ももの筋トレを
今後も励行していかなければ、症状の再燃は必至であると言えましょう。
こうして膝痛の劇的改善を実体験したCさんは、
同様に眼のほうも好くなるならばということで、
「もう少し間をつめて通うようにします」
とおっしゃっていました。
ところで、証の改善を図るにおいていちばん大事なことは、
飲食の習慣を改めることです。
鍼灸、湯液(漢方薬)、指圧、その他の物理療法など、
たとえどんなに有効な治療手段を用いたところで、
飲食を中心とした生活習慣を改善しなければ、
その治療はけっして奏功しません。
ことに水滞証においては、飲食の改善は必須かつ最重要課目です。
私が水滞証の患者さんに、飲食の節制ということを
うるさく申し上げるのは、それゆえにこそなのです。
そもそも水滞が進行・悪化する原因は、脾胃の働きの弱りにあります。
漢方医学において「脾胃(ひい)」というのは、
「飲食物から活動エネルギー(=気)を生み出す熱源」のこと。
Cさんのような水滞証の患者さんにおいては、例外なく
この脾胃の働きがすこぶる弱い(=脾虚)のです。
そして、この脾胃を人体の熱源たらしめているのは、
「腎の陽気」が竈(かまど)のように脾胃を下から熱し、
温めているからにほかなりません。
いわば「熱源の熱源」と言えるのが腎であるわけです。
水滞証では、この「腎の陽気」が絶対的に不足しているのです。
腎の陽気は、別名を「命門(めいもん)」ともいい、
文字どおりまさに「健康長命に至る門」であると言えます。
したがって、水滞証の治療には、腎と脾の
二つの蔵を整えることが不可避となります。
ほぼ月イチの、指圧とお灸(しかも台座灸)だけという制約の中、
Cさんがどこまで自分に厳しく飲食の施制を励行できるか――
それがこの治療の成否のカギを握っていると言えましょう。
水滞証と腎との因果関係をみなさんに体感していただくために、
12回にわたって実際の症例を用いてお話ししてまいりましたが、
この辺でいったん、このお話の幕は下ろさせていただきたいと思います。
Cさんに対する治療は、その後10か月を経過した現在も
なお継続中であることを、最後にお伝えしておきます。(了)
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