陽きわまりて陰を生ず(2) ~陰陽五行は古代の診断装置~
カテゴリー:「陰陽五行」の話
(※【陽きわまりて陰を生ず(1)】のつづきです)
立秋を過ぎ、陽もきわまって陰に転じ始めたのでしょうか、
奈良ではここ数日、夜間の気温が25℃を下回り、
久しぶりに過ごしやすい夜となっています。
そこで、今回は「陽きわまって陰を生ずる」例をもう一つご紹介しましょう。
寒い時期にかぜを引くと、一般的にはまず鼻水が出ますよね。
続いて咽が赤く腫れて、痰の絡んだ咳が出るようになります。
そして、体温が39℃を超えるような高熱になると、
それまで熱かった自身の体が、こんどは一転、寒気がし始め、
体がガタガタとふるえてくるようになります。
(※これを「悪寒戦慄(おかんせんりつ)」といいます)
そこで、厚い蒲団にくるまってじっとしていると、
やがて多量の汗が出て、熱は下がる――。
これらはすべて、ウイルス感染から身を守るために
体の恒常性を維持しようとする人体の生理反応です。
ウイルス感染による鼻粘膜の炎症という「陽の増長」を受けて、
鼻水という「陰の産生」が起きたわけです。
炎症が咽から先の気道にまで及ぶと、
こんどは痰という「陰の産生」が起きるのも同じメカニズムによります。
そして、体温39℃超という「陽のきわみ」に達すると、
脳は自身を守るべく、全身に「冷却指令」を発令します。
それが多量の発汗という「陰の産生」であり、
高熱で寒気がするというのも、
体の、自身を冷やそうとするスイッチが入った――
つまり「陽きわまった体に陰が生じた」
ためであると解釈することができます。
そのように考えると、そもそも「かぜを引く」ということ自体が、
冷えきった体が「陰きわまって陽に転じた結果である」
ということに思い至るはずです。
このように、漢方医学では、
人体の生理メカニズムから病の原因に至るまでを
陰陽論というツールを用いて説明することができるわけです。
漢方医学とは、言うまでもなく、
古代中国において発達した伝統的な古典医学です。
したがって、そこには現代医学の最新の検査機器や
ハイテクな診断装置といったものは存在しません。
その代わりに、患者さんの体をよく観、よく触り、
問診をして、話をよく聴く。
そして、陰陽論や五行説という、いわば「古代の診断装置」を
駆使して病の原因を突きとめ、治療していく――。
そこに「漢方医学の王道」があると私は考えます。
漢方医学は対症療法などではけっしてないのです。(了)
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