五蔵を整える(1) ~五蔵って何だろう?~
カテゴリー:「五蔵六府」の話
今回のブログでは、実際の臨床例をご紹介するつもりでしたが、
臨床を語る上で避けては通れない「五蔵」という概念について
まだちゃんとお話ししていないことに気が付きました。
これまで「気血水」や「陰陽」について折にふれ書いてきましたが、
これらの概念も「五蔵」と組み合わさることによって
初めて臨床的意義がそこに吹き込まれます。
そこで、今回からしばらくの間、
「五蔵六府」ついてお話ししていきたいと思います。
あれっ、「五臓六腑」じゃないの? 間違ってない?
――誰もがまず、そう思われたことと思います。
しかし、間違いではありません。
「五蔵六府」と書くのが正しいのです。
中国古典医学の聖典の一つに
『黄帝内経(こうていだいけい/こうていだいきょう)』という書物があります。
紀元前3-2世紀頃より編纂が始まったとされ、
世紀の発見として知られる「馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)」の
副葬品の中にあった医書竹簡・木簡類こそが
編纂過程にあった『黄帝内経』の一部ではないかと考えられています。
その『黄帝内経』の中には「五蔵六府」と書かれてあるのです。
しかし、今日一般的な「五臓六腑」と書かずに、
あえてこのブログの中で「蔵」「府」の字を用いたのには、
他にもっと大きな理由があります。
それは「蔵府」と「臓腑」はけっして同じ意味ではないからであり、
両者を混同することは鍼灸・漢方の専門家が絶対にやってはならない
ことだからです。
「蔵」には「蓄える、収める、収蔵する」という意味があります。
(※「Weblio 日中中日辞典」より)
つまり、そうした機能・はたらきを表す文字であるわけです。
同様に「府」には「(ある機能・はたらきの)中心となる重要な地位」
という意味があります。(※同上)
これに対し「臓」「腑」には「月(にくづき)」という部首が付いていますね。
月(にくづき)とは「肉」の字の変形で、これが付くことにより「臓腑」は
「肉体に関連するもの」「解剖学上の内臓器官」を表すようになります。
じゃあ「蔵府」は内臓器官ではないの?
――そのとおりです。
では何であるかといえば、それは解剖学的実体のことではなく、
「(人体の生理的)機能そのもの」です。
したがって、目で見て触ることができ、胸や腹を開けばそこにある、
今日私たちが呼んでいる肝臓や心臓、胃、肺、腎臓などの臓器は
「臓腑」であって、「蔵府」ではありません。
どうしてこのような混同が起きてしまったかというと、
江戸時代、我が国にオランダ医学が入ってきたときに、
当時の蘭方医(=西洋医学者)たちが
『解体新書』にあるような解剖図の各臓器の名称を和訳する際に、
それまでの漢方医(=東洋医学者)が呼び習わしてきた
「心の蔵」「腎の蔵」という呼称をそのまま当てはめて、
「心臓」「腎臓」などとしてしまったことが原因です。
オランダ語で心臓は「hart(ハルト)」、腎臓は「nier(ニール)」。
だったら、元力士の「把瑠都」やサッカーの「闘莉王」「三都主」のように、
「波留都(ハルト)」とか「尼伊瑠(ニイル)」などと訳しておいたほうが
混同されずによかったんじゃないかと思っています。
ともかく、これから「五蔵」についてお話ししていくわけですが、
「心(の蔵)」とか「腎(の蔵)」とか出てきたときには、くどいようですが、
イコール「心臓」「腎臓」のことだとはけっして思わないでください。
それらはあくまでも
「心のなかに収蔵されている機能・はたらき」
「腎のなかに収蔵されている機能・はたらき」
という意味であることを忘れないでいただきたいと思います。
東洋医学を理解する上で、このことはひじょうに大事なことなのです。
(※図①の画像は「ウィキペディア」より引用させていただきました)
(※【五蔵を整える(2)】へつづきます)
(※旧ブログ「五臓って何だろう?」は → こちらから ご覧いただけます)
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