(※【肉離れの二症例】の最終回です)
さて、話を戻して、今度はA子さんとBさんのケースでは
何が違っていたのかについて考えてみることにしましょう。
①性別
②年齢
③皮下出血斑の有無、および歩行時痛の強弱
④現役アスリートであるか否か
このうち、①性別に関しては、同じ条件の下で男女どちらが
肉離れが治りやすいといったようなことは言えないと思いますので、
ここは問題にする必要は無いでしょう。
それに対し、②年齢は病気やけがの予後を大きく左右する
ファクターの一つです。
一般的に、乳幼児や小児はよく高熱を出しますが、
高齢者ではインフルエンザに罹ったような場合でも
比較的高い熱が出ないことが多いものです。
これは、乳幼児や小児が新たな免疫を獲得するために
炎症反応(=発熱)が旺盛に起こっている証拠です。
それに対し、高齢者では炎症反応が希薄になっていますから、
したがって、発熱しても微熱程度であることが多いのです。
この違いはそのまま免疫力・自然治癒力の違いでもあります。
つまり、10代という若い年齢のA子さんと50代のBさんとでは、
その免疫力・自然治癒力において相当な違いがあった
と考えなければなりません。
実際、子どものけがが驚くべき速さで治っていくことは、
私たち施術者のしばしば経験するところです。
最後は、③皮下出血斑の有無と歩行時痛の強弱についてです。
A子さんの患肢にはうっすらと皮下出血斑が認められたのに対し、
Bさんにはそれがみられませんでした。
しかし、このことが直ちにBさんよりもA子さんのほうが重症である
という証左にはなりません。
なぜならば、基本的に筋断裂が起これば、
創傷の大小にかかわらず出血は起こるもの。
それが比較的皮膚に近い筋肉に起これば、
少量であっても体の外から内出血斑として見えるわけですが、
深部で断裂が起こった場合、外から見ただけでは判りにくくなります。
それに対し、肉離れの必発症状(=必ず出現する症状)である
歩行時痛の強弱のほうが、重症度を判別するのに相応しいと言えます。
一般的に言って、痛みの強さは組織損傷の大きさ、
炎症反応の強さに比例するからです。
歩行に際し、腓腹筋やヒラメ筋には伸ばされる力や体重負荷がかかります。
歩くという動作は、それだけ傷口を刺激していることになります。
つまり、明らかに歩行時痛の強かったBさんのほうが、
A子さんよりも比較的重症だったということができます。
こうして見てくると、同じGrade IIであると判断されたお二人ですが、
比較的軽症であったことに加え、何よりも②年齢が若く、
そして④現役アスリートであったことが、
A子さんの肉離れを驚異的なスピードで回復せしめた
原動力であったと申し上げて間違いないでしょう。
このように、分類上同じ病気・同じけがであっても、
その人その人で条件はさまざま異なります。
まさに十人十色、百人百様です。
「あの人が治ったのだから、私も簡単に治るだろう」
「あの人は良くならなかった。だから私もきっとダメだろう」
――そのように考えることが、いかに根拠の無いことであるかが
おわかりいただけたことと思います。
最後に繰り返しになりますが、このお二人の場合、受傷直後の
RICE処置がきちんとできていたことが予後を良好なものにした
ということをもう一度申し上げて、終わりにしたいと思います。(了)
(※画像の出典①/http://sports119.jp/nikubanare-chiryo)
(※画像の出典②/http://healthil.jp/25326)
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