肝の生理(4) ~古代のバイタルサイン~
カテゴリー:「五蔵六府」の話
(※【肝の生理(3)】のつづきです)
「③肝は筋・目・爪をつかさどる」とはどういうことでしょうか。
これは「腎」と骨・脳髄・髪・耳の関係、
「脾」と肌肉(=皮膚および浅層筋を含めた皮下組織)・四肢・口唇
の関係と同様、
「肝」もまた、筋(=深層筋・腱・靱帯など)や目、爪などに
その異状が反映されるということです。
「肝」は、気血の働きに深く関与している蔵府である
――ということを【肝の生理(3)】でお話ししました。
血液を出し入れすることで体内の血流量を調節している、
中央銀行(日銀)のような存在、と言えばわかりやすいでしょうか。
「肝」を病み、その調節がうまくいかなくなると、
必要な臓器に十分な血液が行き渡らなくなります。
その結果、腓返り(こむらがえり)を起こしたり、
瞼(まぶた)の裏や爪の色が蒼白になったり
することがある、というわけです。
このような体の状態を、東洋医学では
「血虚証(けっきょしょう)」といいます。
このように書くと、血行不良・血流障害による症状は
これだけではないのでは?
――と、言いたくなりますよね。
腓返りなどよりも、脳梗塞やCKD(慢性腎臓病)などといった、
もっと生命予後に関わるような大きな病があるではないか。
それを、なにゆえ「筋・目・爪」なのか?
――もちろん、そのとおりです。
しかしそれは、現代医学のように
CTやMRIといった最先端の検査診断装置を持たず、
視診・問診・聴嗅診・触診という四つの診察手段しか
持ち得なかった時代の先賢たちが、
視覚や聴嗅覚、触覚を総動員して体の異変を察知しようとした、
その奮励苦闘の証(あかし)であると私は思います。
筋肉の痙攣や萎縮、目や爪の色味の変化などといった情報は、
おそらく当時としては人間の五感で察知しうる
「バイタルサイン」として、体に起こった異変を知るための
重要な手がかりであったに違いないと思うのです。
(※【肝の生理(5)】へつづきます)
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