腎の生理(2) ~老化と腎~
カテゴリー:「五蔵六府」の話
(※【腎の生理(1)】のつづきです)
「腎」の生理機能の一つに「水分代謝装置としての腎」があり、
ゆえに、水滞証は「腎」の機能障害の一つである――
前回のブログでそうお話ししました。
「①腎は水をつかさどる」とは、このことを言っているわけです。
それでは「②腎は人体の熱源である」とは、どういうことでしょうか。
「腎は生命力の源である」ということを旧ブログでお話ししました。
ヒトの生命力とは何であるかは一概に言えないところがありますが、
仮にそれを「活動エネルギー」と定義するならば、
ヒトの生命力とはまさに「熱」であると言うことができます。
抽象的な意味での熱ではなく、そのものズバリ「体温」のことです。
体温が35℃を下回ると、ヒトは活動できなくなります。
そして、生命体としての体温を維持できなくなったとき、
ヒトは死ぬのです。
「体温維持・発生装置としての腎」がその機能を果たせなくなったとき、
もはや「熱=生命力」を生み出せなくなり、ヒトは死を迎える――
それが漢方医学における「ヒトの死」に対する考え方です。
ちょうど、臍下丹田のあたりに生命力という名の熱を生み出す
大きな竈(かまど)があるイメージ、と言ったらよいでしょうか。
これが「腎は人体の熱源である」という意味です。
「③腎は成長・発育・生殖・老化をつかさどる」はこのままの意味で、
ヒトの発生から生殖、老化に至る、文字どおりヒトの一生は
「腎」のつかさどるところであると漢方医学では考えます。
②では「生命力としての熱=体温」の話をしましたが、
ここでは「腎」はもはや「生命そのもの」と言ってもいい。
それくらい絶対的で、肝腎要な生理機能を有していると言えます。
「④腎は腰・脚・膝をつかさどる」もまたこのままの意味で、
ヒトの下半身は腎の支配下にあると漢方医学では考えます。
「⑤腎は骨・髄・髪・耳・排泄器官をつかさどる」
――これは、骨や髄(=脳・脊髄のこと)、髪の毛や耳、
大小便の排泄器官は、腎のいわば出先機関みたいなもので、
現在のその人の腎の状態を反映すると考えられています。
つまり「腎」の機能が衰えてくると、それは骨が脆(もろ)くなったり、
変形して神経痛が出現するとか、脳が委縮するとか、
さらには白髪になり、髪は抜け落ち、耳が遠くなり、
大小便を失禁するというような症状として現れるということです。
えっ? でも、それって老化現象じゃないの?
――そのとおりです。
ヒトの一生を支配し、老化をつかさどっているのが「腎」ですから、
老化現象とはすなわち「腎の衰え」にほかならないのです。
「⑥腎は恐れと驚きの感情をつかさどる」
これがちょっと難しいというか、イメージしにくいところではないでしょうか。
蔵府が感情までをも支配するというのは漢方医学独特の概念であり、
現代西洋医学からすれば荒唐無稽以外の何ものでもありません。
しかし、ここに漢方医学最大の智慧(ちえ)と特色があるのです。
これは何を言っているのかというと、
「恐れすぎたり驚きすぎたりすると、腎の気を傷(やぶ)る」
というふうに解釈されます。
度を超えた恐怖や驚愕により一夜にして白髪になった――
などという類は、その真偽のほどは別にして、昔からある話です。
これは、前述の
「腎は老化をつかさどる」
「腎は髪をつかさどる」
と照らし合わせて考えると、納得のいく帰結だと思います。
次回は、実際の臨床例を挙げながら、どのような治療がなされて、
どのような改善がみられ、また何が改善されなかったのか――
それを詳しく解説してみたいと思います。
(※【水滞証と腎(1)】へつづきます)
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